あかとくろとあさぎ

2021年10月公開映画『燃えよ剣』を楽しんでいる山田担のブログ

山田涼介くんが今まで演じた役と『燃えよ剣』の沖田総司

の共通点を考えて、過去作品を振り返ってみようという記事です。

燃えよ剣』公開が楽しみすぎて、居ても立ってもいられず書いてしまいました…

 

 シネマスクエアvol.119のインタビューで原田監督が、沖田総司に山田くんを起用した理由の一つとして『グラスホッパー』での蝉役を挙げていらっしゃいました。

また「『鋼の錬金術師』での集中力と目力にも感動した」ともおっしゃっていて、私はそのお言葉そのものにいたく感動したのですが……

この二つの役以外にも、この役もしかして『燃えよ剣』の沖田総司とちょっと共通項があるんじゃないかな?と過去の作品を思い出してみたら楽しくなってきたので、思いつくままに名前を挙げていこうと思います。

まだ公開されていない段階なのでもしかしたら物凄くトンチンカンなことを言っているかもしれませんが、とりあえず原作での描写やこれまで公開された予告動画などを手がかりに……

 

①蝉(2015年『グラスホッパー』)

まずは『燃えよ剣沖田総司役に起用されるきっかけと判明したこちらから。

ナイフ使いの殺し屋の青年の役で、山田くんは劇中で様々なアクションシーンを披露しています。

原田監督が先述のインタビューで「あの寡黙な殺人者の集中力が気になって」とおっしゃっていたように、無言のままでも意志の強さが伝わってくる眼差しが印象的な役柄でした。

また、俊敏な動きで大勢相手に立ち回るアクションシーンなどもあり、監督はその辺りから天才剣士であった沖田総司を連想されたのかな?という気もします。私は今作を見たとき、重心が低く、安定した山田くんのアクションは時代劇の殺陣にも向いているのではないか……と思っていたので、もしそうだったら嬉しいです。

 

ただ、この蝉という役ですが、性格に関してはむしろ『燃えよ剣』の沖田総司とは正反対と言えるかもしれません。

柔和で温厚なイメージの強い沖田とは真逆の、口が悪くぶっきらぼうな激情家です。

そんな蝉にも意外な一面があり……というのがこの映画の肝だったりもするのですが。

 

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第25回日本映画批評家大賞・新人男優賞を受賞したり、他の作品で関わった監督さんも印象的な役としてよく名前を挙げていらっしゃる印象で、山田くんの代表作の一つと言える役かもしれません。

5年前の映画で、山田くんにとっては映画初出演(公開順的には「初」ではないのですが)でもあり、演技はまだ少し初々しい印象もあります(というか、その後の作品での進化が凄くて…)。けれど今見てもインパクト絶大な役柄です……

 

 

エドワード・エルリック(2017年『鋼の錬金術師』)

原田監督がお名前を挙げていらした役、その2です。

こちらも様々な立ち回りのシーンがあるので、その辺りで沖田総司を連想なさったのかなと思います。

原作のエドは「豆粒ドチビ」と言われる(本人が言っていた)ような小柄なキャラクターですが、この映画で山田くんは小回りの効いたアクションを披露しています。

 

CG相手のアクションが多いというのが本作の特徴でしょうか。またアクション以外でも、片足を喪失しながら絶叫するという場面があるのですが、これもCG合成のシーンです。この映画を撮られた曽利文彦監督はVFXを用いた演出に定評がおありですが、今作でもファンタジーの世界観を再現するため、様々なシーンでCGが活用されていました。

 

そんな現実にはあり得ないようなシチュエーションの様々な場面において、山田くんは生々しい「痛み」を感じさせる演技を見せていたように思います。

司馬遼太郎作品の沖田総司と言えば池田屋事件での吐血シーンが有名ですが(『燃えよ剣』本編には出てきませんが、どうやら映画では描かれるようです)、どんな風になるのか、今から楽しみ半分、怖さ半分といった感じです……

 

(原田監督がご覧になっていたと分かって小躍りするぐらい嬉しかった程度に大好きな作品なのですが、沖田総司を絡めて語るとなるとちょっと難しいですね…! また改めて取り上げた記事を書きたいです)

 

 

 

ここからは私が勝手に『燃えよ剣』の沖田総司と共通項があるように感じた役を挙げていきます。

 

③潮田渚(2015年『暗殺教室』2016年『暗殺教室 -卒業編-』)

こちらも漫画原作で、しかも中学生の役です。当時の山田くんはすでに20歳を超えていました……とは言え他の生徒役の方々も現役中学生という人は少なく、並んだ時の絵面に違和感は無いのですが。

小柄で中性的な見た目で、大人しい少年の役です。これといった特技もなく、周囲からは平凡な生徒のように思われているという設定です。

 

同時期に演じた先述の蝉役が、今までのイメージを覆す演技ということで様々な形で評価されたため、渚役にはあまりスポットが当たっていない印象があるのですが(とは言え『暗殺教室』での演技を評価され、山田くんは第39回日本アカデミー賞・新人俳優賞を受賞しているのですが)、それでもかなり高度なことをやっていたように感じました。

まず「小柄で中性的」という部分です。確かに山田くんは小柄で、顔立ちも中性的ですが、実は結構筋肉質な体型なのです(アイドルとしては)。そして、ファン以外の方はあまり意識されたことは無いかもしれませんが、地声も割とハスキーなのです。

なのに、アニメ的な高いトーンの声を作るといったことをせず(アニメでは女性の声優さんが渚くんを演じています)、実写作品の演技として不自然でない範囲でこの役を演じていたんですよね。筋肉質でハスキーボイスの成人男性が、「中性的な男子中学生」を、です。

 

また「アイドル」という肩書きから、蝉のようなぶっきらぼうな口調の演技にギャップを感じる方が多かったのかもしれませんが、山田くんの素の口調はどちらかというとこちらに近い印象なんですよね。なので、おっとりした可愛らしい喋り方をする渚くんの方に私は意外性を感じました。

これはあまりにもファン視点すぎる感想かもしれませんが……

 

燃えよ剣』の沖田総司も、普段はどちらかというと柔和な印象の強いキャラクターです。しかし、ひとたび剣を振るえば容赦はないという二面性を持っています。

渚くんも、相手の油断を誘いがちな自分の見た目を利用して、敵対する相手の隙を突く場面があります。それこそが「暗殺」がテーマであるこの映画の主人公たる所以なのですが。

アクションシーンは前に挙げた二作よりは少ないですが(『卒業編』では菅田将暉くんとがっつり立ち回りをするシーンなどもありますが)、キャラクターの「性質」と言えるような部分ではむしろ、この渚くんが沖田総司により近いのではないか?と私は勝手に思っています。

 

 

セミオトコ(2019年『セミオトコ』)

最も直近での演技のお仕事です。撮影時期的には確か『燃えよ剣』よりも後ですね。

地味で引っ込み思案で、今までの人生何もいいことが無かった…と思って女性の前に現れた、理想を絵に描いたような王子様。しかしその正体はなんとセミ!という、設定だけ聞くとなんとも荒唐無稽なキャラクターです。

見た目は王子様のようでありながら、人間ではないため、どこか浮世離れしていて子供のように無邪気な青年です。そんなところが少し『燃えよ剣』の沖田総司と重なるように感じます。

 

また、このセミオトコは7日間しか生きることができないという設定なのですが(セミなので)、だんだんと死が迫っていくにつれ、この世とあの世の間にいるような、ちょっと独特な儚げな雰囲気を醸し出していくんですよね……

最初はまるで子供のようだった彼が、終盤ではどこか悟りの境地に達したようにもなっていく様がとても印象に残る作品でした。『燃えよ剣』の沖田総司の晩年の姿も凄いものが見れるのではないか……と期待しています。

 

 

⑤原田信夫(2013年『今日の日はさようなら』)

最後は少し昔の作品から。2013年の24時間テレビ内で放送されたスペシャルドラマです。

今まで挙げた山田くんの役は、特殊能力を持っていたり、世界観がファンタジー寄りだったりと、非日常的な設定が多いのですが、この信夫くんは特にそういった何かがあるわけではありません。

ですが、どこか「この世のものではない」ように感じさせられるのです。

 

まずこのドラマそのものについてなのですが、実話がベースになっているため凄く生々しい話なんですね。

序盤で主人公を献身的に看護していた恋人は闘病生活が長引く中で突然連絡を絶ってしまいますし、主人公も何かドラマチックな出来事が起きて突然回復するでもなく、ただ、だんだんと病に体を蝕まれていきます。そんな日常風景を淡々と、しかし美しいものとして描いた作品です。

日常と隣り合わせのところにある「死」というものについて考えさせられるドラマで、私はこの作品を見ていわゆる「闘病もの」ドラマに対するイメージがガラリと変わりました。

 

そんな当作に置いて、この信夫くんというキャラクターはちょっと特殊な立ち位置にいます。

大野智くん演じる主人公が入院先の病院で出会った、どこか謎めいた少年なのですが、幼い頃から難病を患い、長い入院生活を送り、多くの患者仲間を看取るうちに、「死」に対してちょっと独特な感覚を抱いているらしいということがだんだん分かってきます。

信夫くんが主人公を「生」と「死」の狭間のようなところに誘い込む場面があるのですが、そこで恍惚とした表情を浮かべながら「死」について語る山田くんの演技が凄く印象的で……(あまり具体的なことを言うとネタバレになってしまうのでこれくらいで!)なんともゾクッとさせられるものがありました。

 

ところで今回の『燃えよ剣』の映画は、どうやら『燃えよ剣』本編だけでなく同じ司馬遼太郎作の短編集『新撰組血風録』の方からもいくつかエピソードを引用してくるようなのですが、その中の「芹沢鴨の暗殺」という一篇にこんな記述があります。

 近藤と土方から意をふくめられた沖田総司は相変わらず、不思議な若者だった。

「芹沢さん、可哀そうだな」といいながら、この仕事の準備に一番熱心になった。

(中略)

 その日を待ちかねている様子だった。「しかし、芹沢先生は可哀そうだな」と、この底ぬけに明るい若者は、どこか矛盾していた。その可哀そうだなの口の下から、こうもいうのである。

「土方先生、あなたはずるいから、一ノ太刀はご自分がつけるつもりなのでしょう。そうはいきませんよ。私はこれほど検分しているのだから、私に譲っていただきます」

 歳三はかなわない、と思った。

ここでの沖田は、自分が親しくしている芹沢鴨の暗殺計画が進んでいることを知り、心を痛める一方で、いざ殺めるとなれば自分が真っ先に手柄を挙げたい、という野心の強さを見せており、土方をして「不思議な若者」と言わせています。

温厚で柔和な人柄ながら、使命に私情を持ち込まない、独特な死生観を持った沖田総司。私はこの信夫くんを演じたときのような、少し背筋が寒くなるような山田くんの演技が見れるのではないかとも思っています。

 

 

 

この他にも、今回の『燃えよ剣』同様かなり減量して闘病シーンの撮影に臨んだ佐々木諒平役(2015年『母さん、俺は大丈夫』)など、まだまだ関連して語れそうな役柄はあるのですが、とりあえずこれくらいにしておきます。

なんやかんやこうして色々な作品を並べてみましたが、今回の『燃えよ剣』に関しては、今まで見たことがないような山田くんの演技を見ることができるのではないかという期待も大きいです。公開後にこの記事を自分で読み返して、「その楽しみにしていた以上の凄いものが見れたよ!」とニヤニヤできるのではないかと思っています。

書いている私だけが楽しいブログでした!読んでくださった方、ありがとうございます。