あかとくろとあさぎ

2021年10月公開映画『燃えよ剣』を楽しんでいる山田担のブログ

『グッドフェローズ』感想

原田監督が『燃えよ剣』に関連して名前を上げられていた映画を見てみよう!第3弾です。

とはいえ「リオ・ブラボー」と「グッド・フェラーズ」を心に抱いて現場に挑むことになる。

moeyoken-movie.com

公式サイトでこうおっしゃっていたくらいで、どの辺りを意識されているのかあまりよく分からないまま見てしまったのですが……

 

まずストーリーはというと、簡潔にまとめてしまえば「ギャングに憧れた一人の男の栄光と転落の物語」でしょうか。

言ってしまえばそれまでなのですが、彼が落ちぶれていく様は「滅びの美学」と言えるようなものではありませんでした。主人公ヘンリーは自分や家族の身を守るため、かつての仲間を売り、ギャングスターからただの一般市民に成り下がるという、あまりにも尻すぼみで情けない結末を辿ります。


見終わると「くだけた友達」という意味の『グッドフェローズ』というタイトルがこの上ない皮肉に思えてくる、そんな作品でした。

製作背景などほとんどよく知らずに見てしまったのですが、アウトローを美化し、礼賛する過去の作品へのアンチテーゼとして作られたもののようですね。

映画の舞台となった60〜70年代のヒットソングがBGMに使われていたり、当時流行した華やかなデザインが画面を彩っていたりと、その時代に対するノスタルジーを感じさせる一方で、モデルとなった人物たちを過剰に美化することなく一線を引いて冷静に観察する、そんな視点で作られた映画のようにも感じました。

実在する人間の半生記を原作としているそうですが、この主人公が生きる世界が私たちと地続きのところにあると考えると、そういった視点を失わないことが誠実さなのだろうと思います。

映画が製作されたのは1990年で、『ワイルドバンチ』からさらに20年近く経っています。

小気味よいテンポでストーリーが展開され、前に見た二作と比べるとかなり「最近の映画」という印象でした。映画におけるアウトローの描き方もそのぶん変化していったのでしょうね。

 

ちなみに、監督のサイトで『グッドフェローズ』に関して何か言及された箇所はないかふと検索をかけてみたのですが

さて「マー・ローサ」。

まさしく、人類学的見地でマニラのゲットー・ファミリー・ライフをえぐりだした傑作である。このanthropological studyというアスペクトを映画で初めて使ったのはマーティン・スコセッシの「ミーン・ストリーツ」、「レイジング・ブル」から「グッド・フェラーズ」にいたるリトル・イタリーを舞台にした「生まれ故郷の兄ちゃん、おじさん中心の犯罪映画」的心だから、当然、ここにはクライム・ドラマの風雅とわくわく感がある。生まれ故郷のおばちゃん犯罪映画だ。家族を愛するがゆえに犯罪に手を染めたマー・ローサの悔しさ、無念の心が最後で光る。

http://www.haradafilms.com/diary/harada_diary.cgi?date=2016.07.08

とおっしゃっていたので、文化人類学的観点からクライム・ドラマを描くという手法を『燃えよ剣』でも意識されたのかもしれないですね。

試衛館の四人が生まれ育った「多摩」という土地を意識した発言を多くされているのも、こういったことなのかなと思いました。

 

そんなわけで原田監督が『燃えよ剣』に関連してお名前を挙げていらした3作を見てみたのですが、これらの作品群に何か分かりやすい共通項があるというわけではないように感じました。

恐らくどれも違った部分で影響を意識されているのではないかなと思うのですが、これだけ様々な時代の映画の名前を挙げられているということは、これら過去の名作を礎として「表現者のバトンを受け継ぐ」姿勢で今回の映画製作に臨まれたという意味だったのかもしれないですね。

 

燃えよ剣』とどこまで関係があるのか分からない話になってしまってすみません。こうやって製作側の方の発言から色々と妄想するのが好きなもので…

後々インタビューなどが公開されて、私の思っていたことが全くの的外れだったとしたら笑ってやってください。